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それ程までに愛おしく・・・
「こんなところにいやがった!」
「・・・っ!」
手首を掴まれ柱の影から引っ張り出されたC.Cは目を見開いて引っ張った相手、玉城を見つめた。
こっちだと、大きな声で仲間に向かって掴んだ手の方をブンブンと大きく振る。
その勢いにC.Cは思わず眉を寄せた。
「こんなところに!逃げようったって無駄だぜ!お前には餌になってもらうんだからなぁ!」
その言葉にC.Cは自分がどうしてこんな場所にいたのかを思い出した。
追いかけられていたのだ。黒の騎士団幹部達に。
愛人だからこいつを連れ戻しに来るはずだと、幹部たちはC.C自身が以前否定した言葉を信じずにルルーシュを捕まえるために艦内にいるC.Cを追いかけていたのだ。
内側から押し出される気圧で空中に体が投げ出されてしまいそうになるという恐怖よりも、鬼気迫る男たちの気迫はそれ以上の恐怖で。
こうして危険な外の柱の陰に隠れていた。
けれどすっかりアーニャ・・・マリアンヌとの会話で自分の身を隠す事を忘れていた。
「ちょっと・・・玉城・・・!そんなに乱暴にしないで。彼女・・・今記憶がないらしいから。」
C.Cを援護するように後からやってきたかレンが視線を逸らしながら声を上げた。
その様子に思わずC.Cは視線を鋭くする。
あれだけ信用されていながら、結局こいつは。
すでにルルーシュの心の奥底にまで入り込んできていた少女だったために、何故かここにいるこの少女がC.Cにはおかしく見えた。
けれどすぐに彼女は期待はずれだったのだと、心の中でため息をつく。
それからさてどうしようか、とC.Cは考えを巡らせた、その時だった。
「クスクス。」
C.Cの背後から笑い声が聞こえる。
コツンと踵を鳴らせてC.Cに隠れるように立っていた少女が幹部たちの目の前に現れた。
口元に笑みを浮かべ、結い上げたピンク色のウェーブのかかった髪は風に煽られ揺れている。まっすぐと向けるルビーの瞳は相手を捉えると面白そうに輝く。
「ラウンズ・・・」
現在ここに配備されているラウンズが一人いる事は知っていて、それが彼女である事も数時間前に姿をちらりとだけ見た面々は知っていた。
けれど、何故か以前見た彼女と目の前の彼女が一致しないような気がしてならなかった。
こんなにも表情豊かだっただろうか・・・?
「・・・あらやだ、私ったら!皆さんに失礼をしてしまったわ。」
ごめんなさいね。そういいながらクスリと笑うその姿は妖艶だ。
「ねぇ、早く行きましょう?ここにはもう用事はないのだから。」
「・・・あぁ、だから待てと言っている。急かすな。」
そう言ってC.Cは掴まれていた腕を無理やり振りほどくと部屋の方へと歩いていく。
けれどそれを阻止するように扇がC.Cの前に立ちふさがった。
「・・・何処に行こうとしているんだ。そんな事、させない!」
「退け。私は忙しい。」
「ちょっと・・・あなた記憶は?!」
カレンが慌てて口を挟めばため息をついたC.Cがチラリと振り返って顎でマリアンヌをさした。
「あぁ、そこの奴に無理やり連れ戻されたのさ。」
「あら。何よその言い草。感謝をして欲しいくらいよね?それにさっきまでの貴方はつまらないわ。」
「・・・ちょっとまて、お前は誰だ?」
「なぁに?あの子の事は気がつかなかったと言うのに、私の事は気がつくなんて。」
その言葉に、その場にいた者の視線がマリアンヌへと向かう。
一度俯いたマリアンヌはゆっくりと顔を上げて裾を持ち上げるような仕草をして小さくお辞儀をした。
「はじめまして。私はマリアンヌ・ヴィ・ブリタニアと申します。息子がお世話になったようで。」
「なっ!」
「マリアンヌ・・・皇妃?!」
「で、でもラウンズの格好をしてるぞ?!・・・どういうことだ?!」
「それは私が今はラウンズだからに決まっているじゃない?」
「・・・ゼロよりも若く見えるが?」
「それはそうよ。だって今の私はあの子よりも若いもの。あの子の母としての体は数年前のテロで死んでしまってるわ。」
「なっ・・・?!」
マリアンヌの言葉に団員たちは言葉を失った。
言っている意味を簡単に理解できるほど彼らの頭は柔らかくできていない。いや、たとえ柔らかくともこの特異性に順応できる者はそうそういはしない。
そんな団員たちを放ってマリアンヌはまた面白そうに一同を眺めると口を開いた。
「貴方たちには感謝しているんだから。だって、あの子に絶望を与えてくれたでしょう?あの子が私の望む姿になるのはそう遠くない未来。あの子は私のもの。私の最高傑作。小さい頃から綿密に計算されて作られたお人形。私の死で暖かな世界を失い絶望を抱いて憎しみを抱いて。私だけの最高のドールなの。」
ウフフ、と恍惚とした笑みを浮かべるマリアンヌをチラリと視界の端に入れたC.Cは静かに視線を落として目を閉じた。
自分でコードを封印したのはきっと・・・
ずっと前から気がついていた。気がつかない振りをしていた。
それについて感謝しているよ。マリアンヌ。気がつかせてくれたのは何よりもお前だ。
もしこのまま、自分の思い通りのルルーシュでなければマリアンヌは迷わず剣を振り下ろすだろう。
そのときは彼女にギアスという力を与えてしまった己に責任がある。私自ら手を下そう。
「早くね、C.C。あんまり遅いと確認できるものも出来なくなってしまうわよ。」
友をこの手で葬ろうと思うほど、私はあいつを・・・
その考えに行き当たって思わずC.Cは小さく笑った。