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「ご主人様・・・?」
思い出すのは痛そうな表情の横顔。
助けたい。傍にいたい。
でもどうやって?
だって私は、何にも役に立つ事なんて出来ない。
数日間近くにいて感じたこと。
いつも辛そうにしているのを眺めている事しかできなかった。
それじゃ意味が無い事も、分かっていた。
記憶さえ、彼の求めるモノさえあれば・・・
どうかどうかどうか!
信じる神など彼女には無かったが、以前見かけた祈りの形を真似て静かに目を閉じた。
そうして願って聞こえたものは、自分に似た声音。
孤独なんて
「消えた・・・?」
今まで目の前にいたはずのゼロと、ゼロを庇うように降り立った蜃気楼が目の前から忽然と姿を消した。
「まさか・・・バベルタワーの時と同じ・・・?」
カレンが呆然と呟いた言葉は倉庫の中で大きく響き、団員たちの方にまで届いた。
「おいカレン!どういうことだよ!」
説明しろ!そう言って声を上げたのは玉城。
カレンは信じられないと言うように目を見張りながら遅れながらも玉城や藤堂の立つほうへと視線を向ける。
けれどその時、カレンの視界にシュナイゼルとその側近の姿が飛び込んできた。
「・・・なんで・・・」
凝視したまま視線を逸らさないカレンに気がつき、藤堂がはき捨てるように言う。
「彼が教えてくれたんだ。ゼロが俺たちを騙していると。」
「騙す・・・?」
「あぁ。彼はギアスと言う力を使って俺たちに奇跡を見せて騙していた。」
「・・・なんで・・・」
「カレンもそう思うだろ?!あいつを一時期でも親友だと思っていた俺も恥ずかしいぜ!しかも!あいつは皇族だったっていうんだぜ?!」
呟いたカレンの言葉の意味を本来の意味とは違う意味で捕らえた玉城はそのまま同意するように言葉を繋げて声を荒げる。
「その力で敵だけでなく味方まで!あいつに心は無いのかよ!」
「違う!」
「・・・カレン・・・?」
「違う!ゼロは・・・ゼロに心が無いだなんていわないで!」
「カレン!どうしてあんな奴を庇うんだ!あいつは俺たちを騙していたんだぞ?!」
「ゼロは!ルルーシュは・・・そんな奴じゃないって、私には分かる!」
「な、なんでお前・・・」
名前を知っているんだ!と声が上がる。それを知っているのは、先ほど会議室にいたものだけのはず。
「知っていて当たり前じゃない!彼を、一年ぶりに見つけたときはゼロの格好はしていなかったわ。それに、私は一年前のあの戦いのときに知っていた!でもそんな事、どうだって良いわ。それより、皆に聞きたいのは、どうしてシュナイゼルの言葉なんかを鵜呑みにしたのかってことよ!どうしてすぐに信じたりするのよ!」
「俺たちだって始めは半信半疑だった。けれどそれを覆されるほどの証拠があった。それだけだ。」
「そんな、証拠って・・・」
「今までの奇跡、それはギアスで行なわれたこと。それに、この間の出撃、そして今回のフレイア砲撃の事。どれも最近の事だが、俺たちのところまでその事実は伝えられていない。」
「この間の出撃・・・?」
「この間、中華連邦で俺たち幹部に伝えられていない作戦があった。そこでゼロは関係の無い女、子どもを殺せと命令したそうだ。」
「なっ・・・!」
「その出撃内容はおろか、出撃したという事実さえ俺たちには秘された。それに今回、フレイアが撃たれさえしなければ、朝比奈は・・・!」
「それに先ほど、本人も言っていた。俺たちは仲間ではなく、ただの駒だと!それでもカレンはあいつを庇うのか?!」
「・・・この間の出撃の事、私はなんともいえないわ。だって、一方的な意見しか知らないし、それに皆だってその出撃の全てを知っているわけでもなさそうだし。けれどさっきの、駒だといったこと・・・あれは彼の嘘よ!だって私が離れた瞬間に彼は言ったもの。小さい声で、生きろって!彼は私に仲間だと言ったら、彼の盾となって彼を守ろうとする私も殺される。考えて彼はあんな事をいったのよ!」
カレンの言葉に団員たちが僅かに動揺した。けれど騙していたことをすぐに思い出して再び声を荒げる。
「・・・そ、それでも!俺たちはあいつを信じられない!俺たちだって、ギアスをかけられているかもしれないんだ!」
「・・・ならば、試してみますか?」
その場に響いたのは出撃から帰ってこなかったジュレミアの声。
「お前は・・・何処に行っていたんだ。」
「皆さんこんなところに勢ぞろいとは。それにあそこに見えるのは、シュナイゼル殿下とコーネリア殿下ではありませんか。私の帰還の出迎え・・・と言う事でもなさそうですね。」
それで?と視線を向けられ扇は眉を寄せて小さく息を吐いた。
「・・・ゼロを引き渡す予定だったんだ。」
「ゼロを・・・?!何故・・・?!」
「あいつは俺たちを裏切った。そしてこれからブリタニアへ引き渡す予定だったんだ。日本と交換でね。」
「なっ!!!どういうことですか?!扇さん!」
「それは・・・それで、ゼロは何処に?」
カレンとは正反対に落ち着いた様子で口を開くジュレミア。
「消えちまったんだよ!目の前からな!」
その言葉にあからさまにホッとするジュレミアに同じくその場にいたヴィレッタが声を張り上げた。
「ジュレミア卿!どうして貴方は!貴方は、ゼロを憎んでいたではありませんか!」
「それはすでに過去。そしてそれは私の大きな過ちでした。」
「やはりジュレミアはギアスに・・・!」
「ギアス・・・?私がですか?・・・何をおかしなことを。それはありませんね。私がゼロに膝を折るのは忠義のため。決してそんな力のせいではありません。」
「それが嘘ではないという証拠は・・・?」
静かに口を開いたのはシュナイゼルだった。騒がしい倉庫内も一瞬で静まる。シュナイゼルはジュレミアを上から見下ろし答えを待った。
「・・・皆様は何か勘違いしていらっしゃる。そして宰相閣下。貴方もギアスについて全てを知っているわけではないようですね。あぁ、私自身も全てを知っているわけではないので、こういう場合は知っている情報量の差、という事になるのでしょうか。」
「では、君の知っているギアスについて教えてくれるのかい?」
「ただで・・・とは言いますまい?」
「君が私と取引を・・・?」
「まぁ・・・そうとっていただいても構いませんが。私はただ、主であるゼロの身の安全を第一に考えているだけでございますから。」
「・・・彼も優秀な部下を手に入れたようだね。」
「貴方にそう言っていただけるとは、私も嬉しく思いますよ。」
「しかし残念だよ。その交渉は飲めないな。ゼロは父上の前に引き出さなくては。」
「交渉決裂ですか。まぁ、いいですよ。それから・・・あぁ、私の忠義が嘘か、嘘でないか・・・でしたね。私はギアスキャンセラーという特殊な能力を手に入れましたので、力を発動させればそんなもの。どうせなので、試してみますか・・・?」
シュナイゼルから視線を外して、団員たちへと視線を向けた。一瞬左目が光ったかと思うと、すぐにその光は消え失せる。いったい何が起こったのかわからず、呆然とする騎士団員達。
「な、にを・・・?!」
「それで?何か自分の知らない事など在りましたか?記憶の中でそういったものが無いようでしたら、ギアスにはかかっていませんよ。」
「・・・ない。」
「おれ・・・もだ・・・」
「おや。それでは皆さん、ゼロにギアスをかけられたことが無いという事になりますね。これで一つ不安は拭い去る事ができたという事になりますが・・・しかし私にはすでにそんな事、どうでも良い事。」
「ジュレミア・・・?」
「ここにゼロがいないのであればここにいる必要はありません。それにここはあの方に優しい場所ではなくなってしまった。」
「優しい・・・?何を言っているんだ、貴様!そんな事、この場所に必要など無いだろう!それに、あんな奴にそんな感情があるとは思えないが?」
馬鹿にしたように千葉が声を上げるとジュレミアは同じく馬鹿にしたようにため息をついて首を左右に振る。
「あの方も人間だ。それを考えた事はおありですか?」
「・・・ならば、先日の作戦内容は人間味の溢れるものだとは感じられなかったが?そして、一年前の特区日本。あれはゼロによるものだと先ほどシュナイゼルより明かされたことだが。それに関しても同じく感じる事は出来ないが?」
「ちょっと、やめてよ、藤堂さん!だったら、ゼロを、ルルーシュを連れてきて話を聞けばいいじゃない!ルルーシュが理由もなくそんな事をするはずが無い!あんなやつの話を信じるくらいなら、ルルーシュに真実を吐かせたほうがいいでしょう?!どうしてよ!なんで・・・なんで・・・!」
カレンの声は段々小さくなり、最後には聞こえなくなった。
ルルーシュが理由も無くそんな事をするはずが無い。
一度でも疑った自分が偉そうに言えることではない事もカレンは分かっていた。
けれど、少しだけ冷静になれば見えてくる。彼に心が無い等、そんな事ある訳がない。
確かに、真実を口にする事は本当に少ないが、けれど先ほどの言葉と、そしてここに久しぶりに帰ってくる事のできたカレンにかけた彼の言葉、あれは本心であるとカレンは思っていた。
滅多に口にされる事の無い本心からの言葉・・・だから嬉しくて、そして同時に今仲間である彼らに彼が分かってもらえないのが悔しかった。
シャーリーの死だって、C.Cの記憶喪失だって、それにナナリーだって・・・彼を取り巻く世界は優しくなくなっていく。
あぁ、どうして自分は、彼を信じる事が出来なかったのか。
どうして疑ってしまったのか。
「おい」
久しぶりに聞いた少女の声に、倉庫にいた人間は思わずそちらへと視線を向けた。
ゼロの部屋にいたときのような白い服ではなく、以前と同じ黒い服を身に纏った少女が立っている。
「あいつは何処だ?」
「あいつ・・・?」
「なんだ。ゼロに決まっているだろう?」
「あいつなんか知るかよ!俺たちの目の前から突然消えたんだ!」
「ほぉ・・・?」
そう言ってグルリと視線を端から端へと向けると、小さく笑みを浮かべる。その笑みが、先ほど部屋で見かけた怯えた少女のものと違っていて思わずカレンは声を上げた。
「あなた・・・記憶は・・・?」
「必死に取り戻したのさ。あの甘ちゃんの為に。どうやら私がいないとダメみたいだからな。・・・けれど本当にあいつは・・・ついにはこいつらにも捨てられたか。」
「捨てるも何も。はじめから俺たちはあいつの仲間でもなんでもなかったんだ。あいつ自身が言っていたしな。」
「なんだ。あいつにそういわれたのか?フン、お前たちもそれを信じたとは。お前たちも大概甘ちゃんだったというわけか。」
「てめっ!」
「あいつは甘ちゃんだといっただろう。お前たちなど捨てるなら相当前に切り捨てていたさ。」
「ならばどうして作戦内容を教えられていない?」
「それは・・・この間の事を言っているのか?あれはブリタニアの闇・・・だからな。お前たちだって、説明したところで理解も納得もしないだろうよ。あれがあれば皇帝に勝つ事すら出来ないさ。それに受け継ぐのは、あいつで最後にする予定だった・・・」
どうやらそれも難しくなってしまったが・・・そう言ってC.Cは視線を落とした。
「しかし俺たちは、ギアスとか言う力を持った彼を信じる事など出来ない!」
「それは恐ろしいからか?まぁ、そうだろうな。人と言うものはそういうものさ。」
「・・・あいつは、俺たちを騙していた。奇跡の力は作戦なんかではなかった・・・!」
「フッ・・・確かにギアスがなければ出来ないこともあっただろうが・・・日々の作戦は奴自身のものだぞ?」
「なら、どうしてユーフェミアに日本人を殺せといったんだ?!」
「確かにそう言ったな、奴は。けれどそれが偶然そういうことになってしまったら?」
「・・・偶然・・・?」
「あぁ、奴は、特区に参加しようとしていたさ。その為に、ギアスの力の説明をしようとした。『日本人を殺せ』それはただのたとえ話。けれどギアスの暴走で、偶然その時ユーフェミアはギアスにかかってしまった。かかってしまったら全て殺し終えるまで止まらない。だから、奴は殺した。そしてユーフェミアを殺した事を無駄にしないためにああするしかなかった。」
「そ・・・な・・・それなら、どうして・・・言ってくれれば・・・」
「奴はそういう奴だと、お前たちも知っているはずだ。あいつは結果だけが全てだと、言っていたじゃないか。それにしても・・・」
クスクスと騎士団員の前でC.Cは笑う。どれだけ事実を並べても、すでに目の前の彼らの心には響いていない。
「王の力はお前を孤独にする。フフ・・・しかし自分で言っておきながらなんとも・・・」
そう言ってC.Cは踵を返す。
「ちょっと待って!何処に・・・まさか・・・ゼロの・・・?」
「当たり前だろう?あいつは一人では何も出来ない奴なんだ。それに、奴がここにいないのであれば私がここにいる意味もなくなるさ。」
「ならば私も。」
「ちょっと待ちなさい!私も、私も連れて行きなさい!」
「なっ!カレン?!」
「扇さん。ゼロが信じられないと扇さんは言った・・・けれど私は、あいつに会って、真相を聞きに行くわ!そうでなければ、私は、ここにいる事も出来そうにない。だって、皆は何一つあいつに尋ねていない。真実は、自分の耳と目で聞いた事だけを信じたいの。だから・・・」
私も連れて行って。そう言ってカレンはC.Cをまっすぐと見つめる。C.Cはニヤリと笑ってジュレミアとカレンを振り返ると言った。
「ついて来い。」
お前が辛いというのなら、私が治してやろうじゃないか。
孤独にすると告げたが、私はお前から離れるつもりはないんだよ。
だから最後までお前の傍にいてやる。
だって、お前は目が離せないくらい危なっかしいからな。
この私がついていてやるんだぞ?光栄に思え。ルルーシュ。