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「1年前の言葉・・・俺、あれだけ言ったよね。結局君はあのまま残ったんだ。あのまま俺の言うとおりにしていれば、今の君はなかっただろう。」
「あのまま?ハッ!それって、私に日本人としての誇りを捨てろって?あんた、私を馬鹿にするのもいい加減に・・・っ!」
「黙れ!・・・っ!」
カレンの胸元を掴み顔を近づける。けれど硬く目を閉じて息を整えたスザクはもう一度口を開いた。
「カレン。俺は手荒な真似はしたくない。だから少しだけ眠っていてくれないか。」
そう言ってスザクは素早くカレンの首に一撃入れる。そうすることで気を失ったカレンを担ぐと、大きな広間へと歩を進めた。
手折られた赤い花
「なぁ、スザクー!今日はどういったことで私たちは呼ばれたんだ?」
「ジノ・・・どいてくれないか。」
「・・・」
カシャと音をさせてアーニャが二人をカメラで写す。
三人は今日、エリア11の総督府へと来ていた。総督府の最上階に位置するこの部屋は主に皇帝や皇族が通信する際に使われる部屋であり、ラウンズでも滅多に入ることのない場所であった。
ジノやアーニャがアッシュフォード学園に編入して5日。特に大きな仕事は無かった為にこうしてラウンズの正式な格好は皆久しぶりだった。
本職はこちらだというけれど、やはり友達と一緒に平穏な生活を過ごしているほうが楽しい。それは学園で5日過ごして感じたことでもあった。
ジノもアーニャも口に出したことは無かったけれど軍の仕事が入ったと連絡が来たとき内心すごくガッカリしたものだった。
「はぁー。」
「ジノ。」
ジッとアーニャに目を覗き込まれてジノは小さく苦笑した。
何より、今日はルルーシュの作ったケーキを食べる予定だったのに。ルルーシュは生徒会副会長でクラブハウスに住まう少年だ。ロロという名の弟がいて、常に共に行動している。そんなルルーシュがロロの為に作ったというケーキを生徒会にお裾分けしてくれる。そんな話を朝していたのに。まさかの出頭命令。
「ジノ。」
今度はスザクに呼ばれ、画面へと視線を向けた。気を引き締めなくては。ジノは口元を引き締め顔を真正面へと向けた。
「集まっているな。」
三人は画面の皇帝へと膝を折る。
いったい何があるのだろうか。このエリア11にはもうゼロはいない。そしてこのエリアにはゼロほどの者もいない。それなのにラウンズを3人もこのエリアの学園に編入させ、留まらせている。
けれども皇帝の考えること。それ以上は考えてはいけないと長いラウンズ生活で身に着けたことでもあった。
ジノがそんな事を考えているとスザクが口を開いていた。
「皇帝陛下。今日はどのような用件なのでしょうか。」
「今日は新たに加わったラウンズの紹介を、と思ってな。」
「なっ!」
「新たな、ラウンズ?!」
「ここへ。ナイト・オブ・ファイブ。」
「はい。」
高い声が響く。カツンカツンと踵を鳴らして入ってきたのは、燃えるような紅。
「あなた・・・」
「はじめまして、私はカレン。ナイト・オブ・ファイブのカレン・シュタットフェルトよ。」
そう言って、カレンはニコリと笑みを浮かべた。
カレンが現れてすぐに皇帝からの通信が切れ、ジノがカレンに近づいた。
「君、あの紅蓮弐式のパイロットだよね?」
「・・・ごめんなさい。少し前に事故に合って・・・記憶が曖昧なの。」
「・・・記憶喪失。」
「一時的なものだって言われているんだけれど・・・」
「ふぅん・・・」
カレンのその言葉にジノは片眉を上げ、自分たちから少し離れてこちらに視線を向けていたスザクへと近づき囁いた。
「なぁなぁ。スザク。お前あれをどう思う?」
「・・・どうって?」
「あれって演技とかなのかな?私たちが中華連邦から帰ってきてまだ5日。彼女は拘束されたのを俺もお前も見た。だからそのまま本国にアヴァロンで輸送されたはずだ。それなのに事故?アヴァロンが事故ったなんて話は聞いていない。それなのに彼女は事故で記憶喪失。何かあるんじゃ・・・」
「何かって?」
「それは私にも分からない。」
スザクはジノの言葉に小さく視線を向け、聞き返すがジノはニカリと笑い、腰に手を当てている。そんなジノの様子に思わずスザクはジノの名を呆れたように吐き出して、部屋を出るべく三人に背を向け歩き出した。
「なんだよなぁースザクは。」
秘密主義者なんだから。それは口に出しては言わなかったけれど、ジノがいつも思っていることだった。
スザクは廊下で一人、険しい表情をしながら歩いていた。
彼女は危険だ。何をするか分からない。それに彼女にとってこれが一番良い方法なんだ。
思い出すのは中華連邦からアヴァロンでブリタニア本国に戻ったときのこと。暴れるカレンをスザクが気絶させ、皇帝の前に引きずりだした。
その場にはゼロを引きずり出したときと同じ、三人しかいない。
「こやつがあの紅蓮弐式のパイロットか。」
「はい。」
「シュタットフェルト家の一人娘でもある。そうだな。」
「そして黒の騎士団のエースパイロットであります。」
「おとなしくしていれば良いものを。しかし惜しい。実に惜しい。こやつはラウンズと引けをとらない戦いぶりだという。いっその事、記憶を書き換えてしまおうか。そして黒の騎士団と戦わせるのも良い。」
スザクとカレンに視線を向けた皇帝はニヤリと笑う。そうして皇帝の瞳が赤く染まると同時に無理やり開かせたカレンの瞳も赤く染まり、皇帝は呪いの言葉をその口に乗せたのだった。
その後のことはスザクも知らない。こうしてエリア11に来ることは聞いていなかった。
エリア11は黒の騎士団がいなくなりかなり落ち着いてきている。けれど皇帝が自分たちをここから退けないのはここを拠点として騎士団との戦いに参加させるため。
中華連邦にいる彼らに近いのはブリタニア本国よりもこのエリアのほうだ。そしてここには何よりルルーシュがいる。
そう。ルルーシュが・・・
けれど一つ黒の騎士団の戦力は減った。黒の騎士団最強の戦士はこちらの見方となった。
他はラウンズが束になればどうって事のない者ばかり。藤堂さんをどうにかする前にゼロを倒すことくらい出来るだろう。
残すはゼロ。やっとお前を捕まえることが出来る。
そこでようやくスザクは笑みを浮かべた。
「クルルギ卿!」
けれど声をかけられすぐにその笑みは消え去った。いつもの無表情に戻ると声のしたほうにスザクは振り返る。
「・・・なに?シュタットフェルト卿。」
「・・・いえ、先ほどご挨拶をしていなかったので。」
「あぁ・・・俺はナイト・オブ・セブンのクルルギスザクだ。」
「ナイト・オブ・ファイブのカレン・シュタットフェルトです。これからよろしくお願いします。」
そう言ってカレンは黒の手袋に包まれた右手を差し出した。同じようにスザクも右手を差し出し、カレンの手を取って握る。
「こちらこそ。」