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「先ほどの電話・・・スザクさん、あれはお兄様なのですよね!そうなのでしょう!?一年はなれていても、分かります!あの声はお兄様!」
「ナ、ナナリー・・・」
「スザクさん、明日学校へ行かれるのでしょう?私はもう学校にはいけません。こうしてこのエリアの総督に就こうとしている。会って話すことは叶わないことは理解しているつもりです。
だから、もう一度お兄様と会話をさせてください!わがままだということは分かっています。けど、お願いします!スザクさん。」
「ぁ・・・」
嬉しそうに頬を紅潮させていつもの穏やかな少女らしからぬ興奮したように一気に捲くし立てるナナリーにスザクは戸惑い一歩後ろに退く。
「あ・・・ナ、ナリー」
「どうかしたのですか?スザクさん。」
スザクはナナリーの名を呼んでルルーシュのことを言おうと決意をした。しかし、ナナリーの向ける嬉しそうな微笑を見て、言葉が、出てこなかった。
「な、なんでもないんだ・・・・・・・・・・・・ごめん」
けれども伝えることが出来なかった。最後の『ごめん』はいったい何に対してだったのだろうか。スザクは硬く目を瞑った。
「ではスザクさん、お願いしますね!」
「・・・・・・うん。」
再度声をかけられ、スザクは頷くしかなかった。
罰を与えられた少年は
「どういうことでしょうか!」
「この捜査はもう終わりだ。今すぐ撤退しろ。それが皇帝陛下からのお言葉だ。」
「何故!やっと、やっとわれわれは報われるのではないですか!ゼロが復活した!まだ、始まったばかりではありませんか!枢木卿!」
「黙れ。皇帝陛下のお言葉に背くおつもりですか。ヴィレッタ・ヌゥ。」
「っ!」
「異論は無いな。」
「・・・どういうことなんですか?兄さ、いえ、餌は今日部屋を見たのですがいなかった。貴方はこれの意味を知っている・・・?」
「機密にかかわる。お前たちに教えることは出来ない。・・・分かったらここから全てのカメラと機材を気づかれることなく持って出て行け!」
「・・・イエス・マイ・ロード・・・」
不服そうにしている二人を押し黙らせ、スザクは地下の秘密基地を抜け出す。
「・・・」
エレベーター抜けるとあたりはいつもと変わらないアッシュフォード学園が広がっている。
風に吹かれて見上げれば、視界にアーサーを追いかけて上った校舎の屋根が映る。
窓の縁に手をかけて手を伸ばした先には・・・
「ぅ・・・」
気持ちの悪さを振り払うようにスザクは近くの壁を思いっきり殴った。
「僕は間違って、いない・・・!」
そうして向かった先は、暖かい空気の溢れる生徒会室。
「なんでこんなに書類を貯めるんですか!会長!」
「気がついたらこんなにあったのよぉ・・・大丈夫!皆でやれば終わるわよ!」
「もぉ!」
「どうしてこんな時に・・・って、お!スザク!良い所に!お前の分もあるぞー!」
扉の外まで聞こえるやり取りにスザクは頬を緩ませながら入ればリヴァルがスザクの姿に一番に気がつき声をかけた。
机の上には書類がどっさりと詰まれていて一人当たりの配分が多い。
一年前もよく見かけた光景に、変わっていないと笑えばリヴァルからつつかれる。
「なーに笑ってんだよ!こっちは人手が足りなくて困ってるって言うのにー」
「ごめんごめん。変わらないなって思ったらちょっとおかしくて。」
「・・・あぁ。ま、ここはメンバーの入れ替えだって無かったしなー。」
「会長は留年ですし。」
「うるさいわね!いいじゃない?また今年もいろんなイベントを沢山やるわよー!って事でまずはこの書類からね!ほらほら皆手を動かーす!」
「お、そういえばルルーシュがいないけどあいつは?」
リヴァルの言葉に僅かに肩を揺らしたスザク。そんなスザクを置いて周りはルルーシュのことで盛り上がる。
「ロローお前、兄ちゃんから何か聞いてるか?」
「・・・何も。というか、今日は朝から兄さんに会っていないんです。」
そう言ってからスザクの方へロロが視線を向ける。しかしその視線にすらスザクは気がついていなかった。
そのことにロロは気がつき、僅かに眉を寄せた。
「なんだ?さては女のところかー?」
「もぉ!リヴァル!ルルがそんな事するわけないじゃない!」
「いてっ!なんだよシャーリー!ははぁん、気になるんだ?」
「な、なななななな!」
「ほらほら!ルルーシュがいないことはだいぶ戦力が落ちるけど、やらなくちゃ終わらないのよー!」
そう、ミレイが大きな声で言ったとき、生徒会の扉が静かに開かれた。
「お?ルルーシュ?遅かったなー・・・」
「ルル?!今日は授業も出てなかったじゃない・・・」
「ルルーシュ?ちょうどよかったー!気がついたらこんなに沢山書類が・・・」
「兄さん?今朝は・・・」
生徒会室にいるものがいっせいに振り返り声をかける。けれども、そこにいたのは・・・
「ナ、ナナリー・・・」
薄茶の波打つ髪を緩やかに背に垂らし、淡い色の可憐なドレスに身を包み、静かな笑みをその口元に称えた少女がたった一人そこにいた。
静かになった室内で、スザクの言った言葉だけがやけに響く。
「ど、して・・・?」
「あら、ここにいたんですか?スザクさん。」
ニコリと笑うと車椅子を操作して、室内の中心へと向かう。
「ここには・・・」
「はい、来ないつもりでいたのですが・・・予定を変更することにしました。」
「でも、・・・、・・・。」
何かを言おうと口を開くが何を口にすればいいのか分からないスザクはパクパクと口を無駄に動かすだけで終わる。
そんなスザクにリヴァルが肘で突く様にして気を誘い、振り向いたスザクの耳元でリヴァルが囁いた。
「なぁ、スザク、この可愛い子知り合いか?紹介しろよー!」
「リヴァル・・・」
ニヤニヤと笑みを浮かべるリヴァルに困ったようにスザクは表情を浮かべた。
その様子を見ていたナナリーがスザクの変わりに口を開いた。
「お久しぶりです、私は、ナナリーランペルージです。覚えていませんか?」
「え・・・?」
一様にナナリーの言葉にどう反応すればいいのか分からず、固まる。そしてすぐに頭をかいて苦笑いをしたミレイがナナリーに答えた。
「あー・・・えと、ごめん。誰だか思い出せない。」
「私もなの。ランペルージって事は・・・ルル、ルルーシュの親戚の人?」
「・・・いいえ、ルルーシュ・ランペルージは私のお兄様です。」
「えぇ?!だったらロロの妹・・・?あ、もしかして双子かな?似てるし!」
シャーリーの言葉にナナリーは浮かべていた笑みを深くして首を横に振る。
「いいえ、私は、私とお兄様は二人だけですよ。他に兄弟はいません。」
「え・・・?」
「・・・そうですか、やはりそうだったのですね。それならば、お兄様を殺したのも、貴方なのですね。」
「っ!」
ナナリーのその言葉に、スザクは傍から見ても分かるくらい動揺を示した。
「殺したって・・・どういう・・・?」
「スザク、君が・・・?」
「ルルーシュ・・・を?!どうして!なんで・・・?お前ら、親友だっただろ?!」
「ちがう・・・違う・・・!」
「嘘つきなスザクさん。ずっと私を騙していた。面白かったですか?滑稽だったでしょう?何も知らない妹と言うのは。」
「ど、して・・・?ナナリー・・・」
今朝までは知らなかったはずなのに、とスザクは小さく呟く。その呟きを、聞き取ったナナリーは眉間にしわを寄せる。
「僕が教えたんだよ。」
そうして現れた声にナナリーを除くその場にいる全員が振り返る。
そこには、金色の長い髪を持った、貴族の着るような服を纏った少年が立っていた。見上げる瞳は純粋な光を宿して、スザクを見つめる。
「お、前は・・・」
「僕はV.V。ナナリーに教えたのは、僕。」
「なんで、どうして!どうしてそんな事をしたんだ!そんなことさえなければ・・・!」
「そんなことがなければ、なんですか?スザクさん。」
「だって、フェアじゃないでしょ?巻き込まれているのに、一人だけ知らないなんて。それにナナリーを突然宮殿に連れてきちゃったのは僕も悪いと思ってたんだ。だから教えてあげたんだよ。」
「だからって・・・!」
「スザクさん。私と初めて本国で会ったときのこと、覚えていますか?」
「ナ・・・ナリー」
「私は覚えています。私、嬉しかったんです。すごく。」
もう一度、『覚えていますか?』とナナリーが首を傾げればゆっくりと首をたてに振ってスザクは答える。
「う、ん・・・」
「私の周りの方たちはお兄様のこと、教えてくださらなかったんです。何も、どこにいるのかそれすらも。けど、あの日スザクさんに久しぶりに会って、私約束しましたよね。『スザクさんは嘘をつかないでちゃんと教えてくれる』って。それに貴方は『うん』って。答えてくださいましたね。」
「・・・それは・・・」
「嘘をつかないって、そう約束したのに!嘘、嘘、嘘!嘘ばかりじゃないですかっ・・・!」
「でも、それは君のために・・・!」
「そうやって私を言い訳にすることは止めてください。」
「っ!」
「そんな嘘をつかれるくらいなら、はじめから真実を教えてくださった方がよかった!」
「皆さんも・・・」
ポツリと言われた言葉に、話について行けずにただ成り行きを見守っていた生徒会メンバーがナナリーのほうへ視線を向ける。
「すみません。申し訳、ありません。」
「ど、どうして謝るの?」
「それは、記憶が操作されてしまっているからです。」
「なっ!」
「ど、どういうことだよ、それ!」
「今までの記憶に偽りの記憶が植えつけられています。そうですよね?」
そう言ってナナリーがロロのほうに顔を向けると気まずそうに目を伏せているロロがいる。
重々しく口を開くロロは声が僅かに震えている。
「・・・はい。僕と言う存在。そしてこの目の前にいるナナリーの存在が入れ替わっているんです。」
「じゃ・・・」
「はい。僕は真実、ルルーシュ・ランペルージの弟ではありません。そして今目の前にいる、彼女こそがルルーシュの本当の妹。」
「そ、な・・・!」
「どうして・・・?!どうしてそんなことが・・・っ!」
「それは、お兄様が一年前にエリア11を、ブリタニア人を震え上がらせた反逆者、ゼロだからですよね、スザクさん?」
唯一顔を知るスザクに視線は集まった。
スザクはナナリーの言葉に動揺していたのも、ルルーシュがゼロだという言葉を聞いた瞬間冷たい眼差しに変わる。
「あぁ。あいつが反逆者、ゼロだ。そして記憶はあいつ自身にも施された。そうして、そこにいるロロがルルーシュの弟として送り込まれた。」
「そんな、ことが・・・!」
「・・・どうしてですか?」
小さな声が聞こえ、その声を発した元、ナナリーに視線が向かう。
「どうしてですか?!スザクさん!お兄様とスザクさんはお友達だったではないですか・・・!」
「友達だ!友達なんだ!でも!それを先にルルーシュが手を離したんだ!だって、俺は何度も言ったんだ、ナナリーだって聞いていただろ?!ゼロであったルルーシュを何度も止めようとした!」
「警察や軍に入って・・・ということですか?!」
『俺に、以前言っていたみたいに。警察や軍に入れって・・・言うのか?お前。』
「・・・っ!!」
不意に頭の中に響く声にスザクは息を呑んだ。それを振り切るように左右に頭を振る。
そんなスザクを置いてナナリーはそのまま話を続けた。
「それが私たちに出来ない事をスザクさんも知っているでしょう?それなのに、そう言って止めさせようとしただなんて・・・!言い訳にもなりません!」
『警察なんかは、身辺調査をされるんだ。身内に犯罪者がいないかどうか。そんなことがあるというのに、入れる訳がないだろう?』
「ぁ・・・」
また頭の中に響く声がナナリーの言葉に被る。
「私の事はいいのです。どうせただの幼馴染。親友の妹。ただそれだけです。それ以上に何も無い。だから利用されるのも、わかります。だって、私はその程度の知り合いです。」
「ちがっ!そんなこと思ってない!ナナリーだって、大切な幼馴染だ!」
「まぁ、それはありがとうございます。でも、それならばどうしてこのように私はここにいるのでしょう・・・
私、知っているんですよ?エリア11の新総督に。と皇帝陛下に進言したのは、スザクさん、貴方だって。」
「ど、して・・・」
そう呟いてからスザクはV.Vを睨みつけた。しかしV.Vは涼しい顔をしてスザクを見つめるだけ。
「私を総督にして、ゼロをおびき出そうということなんでしょう?利用されていると表現する以外に、どう言い表せばいいのか分かりません。ね?スザクさん。
そしてスザクさん、貴方は私に『これでルルーシュを探しにいけるね』だなんて言葉をかけて。あの言葉、私の事を思ってくれた気持ちなんか、ひとかけらも入っていなかった!」
「違う・・・僕は確かに、あの時そう思ったんだ!」
そんな風に言うスザクにナナリーは困ったように息を吐いた。
「スザクさん。それで貴方は何をしたいのですか?エリア11で。私から見たら、ただお兄様であるゼロとエリア11を賭けて奪い競い合っているようにしか思えません!
それに、貴方がエリア11を手に入れて、どうするというのですか?!何の、思い入れも無いでしょう?本当に始めから、それが目的でブリタニアの軍人になったのですか?そんな事、言っていなかったではありませんか!
そう思うようになったのだって、スザクさんがユフィお姉さまの騎士になってからではありませんか?いいえ、それだって、ユフィお姉さまの騎士として最低な考えですよね。」
「なんでそんな事!僕は、ナイト・オブ・ワンになって、このエリアを争いのない場所にしたい。そう思っているだけなんだ!ユフィの事だって、全く関係ないじゃないか!」
「だって、そういうということは、スザクさん、ユフィお姉さまのことをないがしろにしているって事じゃないですか。だって、ラウンズは皇帝陛下の騎士。ですよ?
騎士と言うものは、この人と決めた人に一生。それは主が亡くなった後もその人を一途に思い、その主の思いを貫き通すこと。そういうものです。」
「その通りだ。だから僕もユフィの意思を継いでラウンズのワンになるのが・・・!」
「・・・スザクさん、私の話を聞いていましたか?だから、ユフィお姉さまを思っているというのなら何故皇帝陛下の騎士に?」
「だから・・・っ!」
「エリアを手に入れること、それがスザクさんが当初から言っていた、中から変えることなのですか?手に入れても、ブリタニアと言う国は、どこも変わらないじゃないですか!!」
「そんな事無い!俺と言う名誉ブリタニア人が手にすることが重要なんだ!そうすれば、ブリタニア人の虐げるナンバーズを見る目も!」
「そうかもしれません。そういったこともあるかもしれません。けれど!同じように他のエリアの人たちが、スザクさんのようにしようとする人が立ち上がるのではないでしょうか?
そうすると、それに反発したブリタニア人との間にまた争いに。果ては戦争と言うことになるかもしれません。
たった一人、スザクさんだけではそういうことは起きません。人間は、自分たちが優位にいると心の余裕も出てくるもの。けれど、スザクさんのような方が沢山出てきたとならば、危機感を覚える方が生まれるでしょう。そこには、必ずといってもいいほど、多くの犠牲が出るでしょう。力で手に入れていくのはどうですか?それはブリタニアのやり方と同じ・・・」
「っ・・・ナナリー!!!」
ナナリーの止まらない言葉にスザクは苛立ち、腕を掴もうと手を伸ばす。そして僅かに指先が揺れた瞬間、ナナリーは触れられた腕を大きく振り払い、スザクの手を、拒絶した。
見れば小さな体は震えている。
「・・・・・・・嫌、嫌です!触らないで下さい!そんな、そんなお兄様を殺した手で私に触れないで下さいっ・・・!」
「っ・・・!」
「嘘つき嘘つき嘘つき!スザクさん、今朝約束してくださったでしょう!お兄様の声を聞かせてくれるって!生きていないお兄様の声をどうやって私に聞かせてくれるというのですか!
『うん』って言ったじゃありませんか!それなのに、どうして・・・っ!それならば聞かせてください!私にお兄様の声を!聞かせてください・・・っ!」
左右に小刻みに振る頭は次第に大きくなっていく。
「・・・いりません、だったらいりません!こんな地位!こんな、スザクさんに利用されるような、エリア11新総督ナナリー・ヴィ・ブリタニアなんてっ!」
「ナナ・・・っ」
「いりませんいりません!だったら、こんな私もいりません!こうしてお兄様の生きていない世界になどいたくありません!」
「ナナリー・・・っ!」
「殺してください。スザクさん、貴方のそのお兄様を殺した手で私も殺してください!」
『ならば好きに殺せばいい。』
頭の中で被る声。よみがえるのは、僅かな光に照らされた、君の、顔。
ルルーシュ・・・
「僕、は・・・僕・・・」
何が違っているの・・・?
違っているはずなんか、ないのに。
やっていることは、正しいはずなのに。
涙を流すナナリーの前に呆然とした表情でスザクは膝をついた。
そうして思い出すのは、君と過ごした楽しかった日々。