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「そうだ、ルルーシュ。お前に伝え忘れていたことがある。」
「なんだ?騎士団のことか?」
騎士団メンバーをブリタニアから助けた後、カレンが部屋から出て行ってすぐにC.Cは口を開いた。
「違う。ギアスについてだ。」
それは等しく平等に
「お兄様!ナナリーです!」
「・・・」
「お兄様?お兄様・・・?」
「・・・あれ?おかしいな。なんだか電波が悪いみたいだ・・・?」
「お・・・」
ピッと音を立ててルルーシュは電話を切った。
後ろから見ていたスザクは眉を顰めそれを見ている。
「スザク、何も聞こえなかったぞ。どうやら電波が悪いみたいだ。」
「おかしいな。さっきは繋がったんだけど。」
ごめんね。そう言ってスザクはルルーシュから携帯を受け取った。
受け取った隙に画面の表示を見るが電源自体が切られてしまっていて見ることは出来なかった。
「・・・新総督は、ナナリー皇女殿下と言うんだ。とても可愛らしい方なんだ。」
そう言ってスザクはルルーシュの表情を窺う。
けれどルルーシュは微笑んだまま視線をスザクから下で行なわれているダンスパーティーの方へと向けられた。
その動きに、不振な点は無いように見えた。しかしそのまま探るような視線を向けることは止めない。
「へぇ。どんな風に知り合ったんだ?お前。ユーフェミア皇女殿下のときもそうだっただろう?運が良いんだな。」
「まあね、僕恵まれているんだよ。」
「・・・そうか。」
ナナリー・・・
まさか皇女に戻されているとは思わなかった。
しかもエリア11の新総督だと?明らかにこれは人質としてじゃないか。
そしてスザク、お前はナナリーと俺を会話させて、ナナリーに絶望を与えたいのか?!俺が、記憶が無いことを知らないナナリーに!
膨れ上がる怒りを抑え、微笑んで、ルルーシュは話題を変えた。
「・・・スザク。」
「なに?ルルーシュ。」
刺さるような視線をスザクから向けられていることも気がついていた。
ブランクがあるとはいえ、11年前は皇族をしていたルルーシュにはそれは分かりやす過ぎるものだった。
ルルーシュがそう呼んで振り返れば、すぐに偽りの笑顔をこちらに向けるスザク。
「スザク、なぁ・・・俺たち友達だよな?」
「・・・あぁ。友達だよ。」
「そうか。」
そう言って再び視線を元に戻す。
煌びやかな光の中で何人もの男女がクルクルと踊っているのが視界に映る。
「なぁ、スザク。俺たちが友達であるというのなら、教えてくれないか?再会の記念だと思って。」
「・・・?」
「あぁ、こうして俺たちが面と向かって話すのは本当に久しぶりじゃないか。だから。」
心地よい風が頬を撫でる。
視界の端でスザクは何かを納得するように、小さく頷いたのが見える。
「・・・何?」
「ずっと、聞いてみたかったんだ。俺のことを知っているやつに。それは会長でも、よかったのかもしれない。会長も知っていたからな。」
それを口にした瞬間、スザクの表情が険しくなる。
記憶が戻ったのかもしれないと思ったんだろうな。と、スザクの思考を想像し、ルルーシュは面白そうにそれを眺めた。
「ルルーシュ。」
僅かに低くなった声でルルーシュの名を呼ぶ。けれどもルルーシュは普段学園で見せるような、おどけた表情で肩をすかせ、続ける。
「けれど俺はお前に聞いてみたい。お前でなくてはならない・・・そう思うんだ。
なぜならお前は、俺が皇族であり、そしてゼロであることを知っている。だから・・・会長ではいけない。」
「ルルーシュ!貴様!」
目にも留まらぬ速さでルルーシュの胸元を掴むと、そのままスザクは地面へと押し倒す。
けれどルルーシュは変わらず、余裕の笑み。
「・・・ここで大きな声を出すと、下に聞こえるぞ。枢木スザク。」
「っ!」
スザクは声を抑える変わりに、ルルーシュを押さえる力を強めた。
「お前!記憶を取り戻したんだな!」
「どうやら俺は一年の間、偽りの記憶でお前たちに監視されていたらしいな。」
「やはり、お前が・・・ゼロっ!」
「その前に、俺の質問に答えるのが先決だろう?社会性の欠片がないぞ。人付き合いのルール違反だな。お前は、ルールを守るんだろう?」
「っ!・・・それで?」
ルルーシュは嫌そうにこちらを見てくるスザクに小さく笑い、まっすぐとスザクの方を見た。
「なぁ、スザク・・・俺はどうすればよかったんだと思う?
ブリタニアの滅亡を企てる反逆者ゼロ。多くの犠牲の上に立つ、それが俺だ。それを考えるには、それに沿うように生きるには遅すぎだ。
けれど時々思ってはいた。他に方法はなかったのか・・・と。お前なら、ちゃんと答えてくれるだろう?俺たちは友達だからな。」
「・・・どうって・・・」
まさかそんな質問をされるとは思っていなかったスザクが険しい表情を僅かに解いた。
「俺が、俺とナナリーが安心して暮らすには、どうしたらよかったんだと、お前は思う?」
「・・・すでに手に入れていたじゃないか。君たちは、幸せに過ごしていた。」
何を今さらそんな事を聞くんだ、というような視線をスザクは向けた。
「確かに、手にしていたかもしれない。けれども俺たちは幸せじゃなかった。」
「・・・なんで?君たちは笑っていただろ。ミレイ会長の起すイベントを楽しんだり、少しだけ退屈な授業を受けたり・・・どれも平穏な学生生活だ。それの何が不満なんだ!
君って、そんなに高望みだったんだ?」
軽蔑の眼差しと共に吐き出される言葉にルルーシュは小さく自嘲的な笑みを浮かべた。
高望み?俺の夢が?幸せ?あれが?
溢れる疑問と共に、1年前のスザクもよみがえる。
「笑っている、か。ならスザク・・・その2年後は?俺たちはどうなっているんだ?」
「ルルーシュは大学生になって、ナナリーは高校生だ。」
「じゃあ、その4年後は?」
「・・・ルルーシュは社会に出て、ナナリーは・・・大学に。」
「なぁ、俺たちがそうやって普通に生きていけると、思うか?」
「・・・。どういうこと・・・?」
「俺たちの今の名前は?」
「ルルーシュ・ランペルージ、ナナリー・ランペルージ。」
「本来の名前は?」
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア・・・ねぇ。なんなの?さっきから。質問の意図が読めないんだけど。」
そんなスザクの疑問もルルーシュは無視をして、そのまま同じように質問を続ける。
「・・・どうして俺は、名前を二つ持っている?そして、本来の名前は、今現在どうなっている?」
「ルルーシュ!」
「俺の質問はこれで最後だ。俺の聞いた質問を繋げて考えろ。お前はすぐに答えを知りたがる・・・お前の悪い癖だな。」
直したほうが良いじゃないか?そうした言葉にスザクはルルーシュを睨みつけたが当のルルーシュは涼しい顔をして答えを待っている。
仕方がなくスザクはそれに答えた。
「・・・・・・・・・ルルーシュたちが生きていることがばれないように、死んだと、思わせるために偽名を・・・・・・っ!」
「それで?そんな俺たちが、社会に出て行けるか?」
「で、でも!ルルーシュの後見人だったアッシュフォード家が・・・
二人の人間の戸籍を改竄したんだから、それ位アッシュフォード家が何とかしてくれるだろ!」
「何とかって、そんな希望的観測に縋っていられないんだ、俺たちはいつ売り渡されるかわからないんだ。」
「でも、会長さんはそんな事!」
「決定権は会長じゃない。会長の、親なんだ。見ていればわかるだろう?会長が、婚約の話を断れないでいるのを。それはそうしたところにも反映されている。
それに会長もよく言ってだろう?親は昔の繁栄を取り戻したいらしい、と。以前のアッシュフォード家は大貴族と言われ、皇族の中で身分が低いとは言え、それでも皇族であった俺と会長は婚約関係を持っていたからな・・・」
「・・・っだからって、ゼロなんかにならなくても方法なんか沢山あるだろ?!」
「だから、スザクにそれを今聞いているんじゃないか。もう、やるには遅すぎたとしても、聞いておきたかったんだ。
他にどんな方法があった?なぁ、俺たちは友達だ。教えてくれるだろう?スザク。」
「ル、ルルーシュ・・・」
「俺に、以前言っていたみたいに。警察や軍に入れって・・・言うのか?お前。」
「そ、そうだ!ゼロなんかになるんじゃなく、軍や警察に・・・!」
「さっきまでの話は覚えているか?スザク。」
「っ!」
「お前も軍人なら、知っているだろう?警察なんかは、身辺調査をされるんだ。身内に犯罪者がいないかどうか。そんなことがあるというのに、入れる訳がないだろう?なぁ、スザク。」
「ぁ・・・」
「なぜなら、俺は、俺たちは、死んだ皇族だ。偽造している身分証もバレてしまう。成長したからといって、面影の残るのは当然だ。上が見たらわかる者にはわかるだろうな。まぁ、もしそれで連れ戻され皇族となった場合・・・俺たちはブリタニアにとって都合の悪い存在だ。多分殺されて・・・しまうだろうな。」
「けど、今ナナリーは殺されていない。お前もさっき声を聞いたはずだ!」
「そうだな。確かに生きて、総督という地位に就こうとしている。けれどそれは俺への人質だろう?エリア11の総督がただ死んだだけではナナリーがエリア11の総督にはならなかったはずだ。
ゼロという反逆者が現れたからこそ、総督となる。それは反逆者がゼロでなくてはならなかったし、エリア11でなくてはそれも叶わなかっただろう。」
「っ!」
「それで、スザク?これ以外にもあるんだろう?沢山って・・・言っていたしな。教えてくれないか?」
「あ、そ・・・それは・・・そうだ、1年前君に僕が守るって言っただろ!ルルーシュが隠れて暮らしていても、僕が稼いで、君たちを守って・・・」
「お前が?そうか。それはありがとう。けれどそれは先ほどの話と同じだな。身辺調査をされると、言っただろう?特にお前は・・・名誉で軍に入ったのだから身辺調査は徹底されているはずだ。それで俺たちの生存はバレる。却下だな。」
「それは・・・」
「他には?」
「他・・・」
「・・・なぁ、スザク。俺の望みは幸せな世界なんだ。虐げられることの無い世界。これは、こんな小さな願いさえも、叶えてはいけないのか?」
悲しそうに微笑むルルーシュがそう口にする。スザクは1年前洞窟内で己が口にした言葉を思い出した。
『君の願いは叶えてはいけない!』
「っ・・・・」
「・・・話はこれくらいにしようか。スザク。」
浮かべていた笑みをルルーシュは引っ込め、変わりに冷たい笑みを浮かべる。
表情の戻ったルルーシュは、抑揚の無い声音でスザク、と名を呼んだ。
「・・・ぇ・・・?」
「もう終わりにしよう、スザク。それにこれを考えてももう過去の事だ。どうすることも出来ない話だ。
過去に戻って、ギアスの暴走を止めることも出来ないし、俺がゼロになるのを止めて他の方法を取ることも出来ないし、母が死ぬのを防ぐことも出来ない。そうだろう?スザク。」
「ル・・・ル、ルーシュ・・・」
突然の変わりように、スザクはついていけないようで、戸惑ったような声を上げた。
「それで、次はお前の質問に答える番だったな。お前の言う通り俺は記憶を取り戻し、再びゼロとなった。」
「っ!」
本来の目的を思い出したのか、スザクから戸惑いは消え去り再び憎しみの篭った瞳を向けられる。ルルーシュは微笑む。
「お前は俺を売ってナイトオブセブンになって、それで再びこの地へとやってきたというわけか。俺の監視、及びに殺害目的で。」
「っあぁ、そうだ。こちらに潜入させていた工作員の報告では全くそういった姿を見せていないと受けていたが、俺にはあれが君だとすぐにわかった。」
「それはそれは。ご期待に沿えて嬉しいよ。」
「・・・いつまでも、その余裕の笑みを浮かべていられると思うな!俺がお前を殺してやる!」
「ならば好きに殺せばいい。」
「なっ!」
まさかルルーシュが自分から殺せといってくるとは思っていなかったスザクは驚きのあまり目を見開いた。
記憶が戻ったルルーシュの発言だからこそ、驚きを隠せなかった。
「なんだ、俺を殺せないのか?一年前はあんなに殺意をむき出しにしてきたと言うのに?お前の目の前にいるのは、お前の大切なものを奪った憎い相手。」
「黙れ・・・」
「一年前に大切な人と友達を失った?俺たちは、本当に友達付き合いをしていただろうか?お前も分かっていたんだろう?『ごっこ』だったって。」
「黙れ。」
「8年前出会い頭にお前は自分のものを奪われた、そう言っていたな、そうして再開した俺から、今度は俺の手にあるものを奪っていくのか。楽しいか?なぁ、スザク。」
「黙れ!」
「どうした?目の前にはお前の憎き仇がいるんだぞ?出来ないのか?お前の目の前にいるのは、ユーフェミアを殺した人物だ!」
「黙れ!ルルーシュ!」
そう言って、スザクは己の懐から拳銃を取り出し、ルルーシュに向けて、撃った。
パァンと一つの銃声が響く。しかしちょうどアッシュフォード学園のフィナーレを飾る花火のおかげで音が気づかれることは無かった。
それと同時に僅かな抵抗を見せていた腕の力が、抜ける。
目の前に横たわる人物は、ピクリとも動かない。
「う、あ、あぁ・・・あぁ・・・あああ・・・」
スザクはこの瞬間、目の前が真っ暗になるような感覚に陥った。
一年前、欲しいものを手するために友を売ったときには感じなかったもの。
ただただ、襲ってくる絶望の意味も孤独の意味も分からず、スザクは己の手に広がる赤い血から視線を外すことが出来なかった。
広場で行なわれていたパーティーも数時間前に終わり、アッシュフォード学園は静寂の闇に包まれていた。
そこへカツンとヒールの音をさせてやってきたのは、特徴的な緑色の長い髪を持った少女、C.Cだった。黒い衣装が風に煽られる。
「いつまでそうやっているつもりだ?まだ満足しないのか?」
「・・・C.C」
C.Cが声を掛ければ誰もいないはずのその場所に答える声が一つ。
闇を纏って現れたのは、先ほど殺されたばかりのルルーシュだった。
「満足さ。これで閉ざされた監視の箱庭から逃げ出せる。ちょうどよかったよ。スザクがこのエリア11に、しかも学園に復帰してくれるとは。これでこちらも動きやすくなる。それに・・・」
「死の無い体になったことが分かったとたん、これか。お前も性格が悪くなったな。歪みすぎだぞ。」
「余計なお世話だC.C。しかしこうならざるを得なくなったのは、誰のせいだ?」
「フフッ相手はビックリするだろうな。死んだはずのお前が生きて目の前に再び現れたときは。」
「あぁ、けれどそれくらいの絶望は味わってもらわなければこちらとしても困る。俺から、奪い取るだけ奪ったのだからな。俺の味わった絶望も等しく味わってもらわなくては。」
「なんて酷い奴なんだ。」
フッと笑うC.Cは心から哀れんでいるようには思えない表情だった。それに対してルルーシュも鼻で笑った。
「なぜなら、俺たちは友達だからな。」
俺という存在が、強く、深く、鮮明に、お前の中に刻み込まれた。
これからお前は、過去を思い出すたびに俺の存在も思い出してくれるだろう?
そうする度に苦しめ。永遠に。忘れる事のないように!
絶望が与えられぬのなら、俺がお前に与えてやろう。
だって、俺たちは友達だろう?