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今度こそ・・・
変わらない想い
「こんにちわぁ!」
生徒会室の扉を開けたのは、笑みを口元に乗せた一人の男だった。
「ロ、ロイドさん?!どうかしたんですか?もしかして軍務ですか?」
今日は誰一人としてかける事無く、生徒会室に顔を出していた。
そこにはルルーシュも含まれるわけで、とっさにスザクはさりげなくルルーシュを隠すように立ち上がりロイドの視線が自分に集中させるようにした。
そのスザクの思惑通り、ロイドは視線をスザクに向けると、違うんだよ~スザク君。と間延びした口調で答える。
「え、じゃあ・・・」
「んーなんだと思う?」
「あら・・・ロイドさん?!」
「こんばんわぁ。ミレイ嬢。あぁー最初に言っておくけどぉ・・・僕は君に会いに来たわけじゃぁーないからねー?」
別室で紅茶の用意をしていたミレイが騒がしくなった部屋に入ってすぐに、ロイドの存在に気がつき声を上げる。
けれどミレイが何かを尋ねる前にロイドが言葉を口にする。
そしてそのまま視線を滑らせるようにしてスザクの後ろにいる存在に向けた。
ニンマリと、笑みを深くするとスザクの後ろにいた人物、ルルーシュはビクリと体を振るわせる。
「あ!ロイドさん!えーっと!」
「まったくもぉ!君に用事があるわけじゃないんだよぉ!」
ロイドの、ルルーシュに向ける視線に気が付いてスザクが割り込むように声を上げるが、邪魔だといわんばかりにスザクの肩の辺りに手を伸ばすとそのまま横に押しやった。
そうしてロイドの目に映るのはルルーシュだけになって初めて、ワザとらしい笑みを引っ込めた。
「怯えないで下さい。僕は、貴方に何かをしに来たわけではありませんので。」
「・・・」
ふざけた口調で会話をしていた男の口からこんなに丁寧なものが紡がれるとは思っておらず、周りにいた者たちはわずかに目を見張る。
「ただ、どうしても見ておきたかったんです。あの性悪の言うことが本当なのかどうか・・・」
「性悪・・・?っまさか・・・!」
「えぇ・・・知っておいでですよ。」
「っ!」
その言葉に、思わず息を呑むルルーシュ。
顔面を蒼白にし、僅かに開いた唇は、恐怖のため震えている。耐えるように握り締めた拳も僅かに震えていた。
そんなルルーシュを安心させるように優しく右手を己の両手で包み込むと、ロイドはルルーシュの耳元で囁いた。
「貴方に、危害を加えに来たわけではありません。殿下、私は貴方の見方です。以前私が口にしたこと、覚えておりませんか・・・?」
周りに聞こえないほど小さな声で、ロイドがそう囁けば目を見開くルルーシュ。
アリエスの離宮で母、マリアンヌが生きて、ナナリーにどこにも障害といえるものが無く、そしてまだ平和だと感じていられた、あの頃。
年齢的に騎士を持つことが許されなかったというのに、ロイドはしつこく騎士にして欲しいと、言ってきていた。
シュナイゼルの学友だという伯爵家の子息は何故か毎日アリエスの離宮に通いつめてはいつも口にするのはそればかり。
ルルーシュは、嫌いではなかった。寧ろ、好きだった。ロイドが遊びに来た時間だけは短く感じる。話をしていて楽しい。
だから、余計にこんな継承権も低い自分になど、もったいないと思った。
そして自分につくことで、ロイドまでも影で何かを言われることがルルーシュには耐えられない、そう思っていた。
『ルルーシュ様!僕を騎士にしてください!』
けれど、あまりの必死さに、最後はルルーシュも折れたのだ。それが、日本に行かされる一ヶ月前の事だった。
「ロイド・・・」
ルルーシュから小さな声が零れ落ちる。けれどもロイドにだけは聞こえていた。
「ずっと・・・ずっと!探していました。貴方が亡くなったという事実を受け入れたくなくて。
あの性悪に、貴方が生きているという情報を教えられたことが癪ですが、またこうしてお会いできたこと、嬉しく、思っております・・・!」
自分の名前がルルーシュの口から聞けたことが嬉しくてロイドは笑みを深くして早口にそう捲し立てると、包み込んでいたルルーシュの手をそのまま持ち上げ、跪き己の口元にそっと寄せた。
「私・・・」
突然入ってきた男の行動に、誰一人として何が起きているのか分からず口を挟むタイミングを逃し、そのまま呆然とその光景を見つめていた。
そんな、テレビの中でしか見かけることの出来ない美しい光景を、扉を開く音が邪魔をした。
「手を上げろ!」
「なっ!」
入ってきたのは軍服を着た、軍人たち。
何人もの軍人が勢い良く室内に入ってきたかと思うと、生徒会メンバーを囲むように立ち、一斉に銃を向けた。
リーダーと思わしき人物は輪から外れた入り口のところに立っている。
「突然なんなんですか!これは!」
「おや?君は・・・第三皇女筆頭騎士の枢木スザクか。今日もこんな所でのんびりと。皇族の騎士になったからといってこんな所でサボっているとは。それを許している皇女殿下も・・・」
「自分の事は結構ですが、皇女殿下のこと、それは立派な皇族批判になります!」
「フン!そんな事、貴様が言わなければわかるまい。それから、貴様も今自分の置かれている状況を理解することだ。静かにした方が懸命ではないか?」
「っ!!!卑怯だ!」
「なんとでも。さて、ここに皇族がいると聞いたのだが。」
「何のことでしょう?この学園には、そういったものはおりませんが。」
「誤魔化さないで頂きたい。これはあるお方からの命令なのだ!もし誤魔化し、嘘偽りを口にするというのなら、それはそのお方を侮辱しているのと同じこと!」
「そんなっ!」
ニヤリと口の端を持ち上げ、軍人は前を見据えた。
「まぁいい。どうせこんなことだろうとは予想していた事だ。
では、こちらから名を呼ばせていただきます。出てきてくださいますか、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア殿下。」
そういって軍人の視線の先にはルルーシュがいる。始めから、出て来いと良いながら誰が皇族なのかを知っていたのだ。
「貴様・・・知って!」
ルルーシュのその言葉に、軍人はただ笑うだけ。思わず怒りで体が震える。
「始めから知っていて・・・何が目的だ!誰の命令だ!」
「目的など、私たちが知るはずも無い。ただ、命令に従うのみ。それに殿下が知る必要はありません。今ここで貴方はお亡くなりになる予定ですから。」
「!」
「ルルが・・・皇族・・・?!」
「そんな・・・あんたたち、おかしいわよ!」
「黙れといっている!」
「きゃっ!」
一人が銃で足元を狙う。
突然の発砲に、思わず声を上げたシャーリーとカレンは押し黙る。
ニーナはこの状況に体が震え、近くにいるミレイにしがみ付く。それを支えるように、抱きしめ、ミレイが軍人を睨みつけた。
ルルーシュは必死にこの状況をどう切り抜けるか頭の中で計算し始めた、そんな時横から声が上がった。
「ハルフォード卿。その命令、誰からなのかなぁ?教えてくれない?」
その言葉に、ハルフォードと呼ばれた軍人が視線を向け、ロイドの姿を見つけると僅かに目を見開く。
「・・・アスプルンド伯爵。どうしてここに。」
「君にはどうだって良いことだよねぇ。僕がここにいることなんて。で、誰なのかなぁ?」
「・・・シュナイゼル殿下からです。」
「ふぅん。・・・本当に?」
メガネの奥から覗き込むような視線を送ると一瞬、軍人は視線を逸らした。
ロイドはそれを見逃さず、小さく笑う。
「ダメダァーメ!全然ダメ!君、嘘はダメだよぉ!」
「なっ!貴様、私の言葉を疑うのか?!・・・それは殿下を疑っていることと同じこと!不敬罪の罪で捕らえさせていただく!」
「何を言うかと思えば。君こそ、侮辱していることになるんじゃなぁい?ねぇ?シュナイゼル殿下?」
「全くだよ。」
「なっ!」
突然現れたシュナイゼルに生徒会室はまたも騒然となった。
遅れてやってきたシュナイゼルは悲しげに顔を歪ませて、周りを見渡す。
「いったい誰からそんな話を聞いたのかな。私でないことは確かだ。私が、ルルーシュにそんな事をさせる命令をすると思うかい?」
「シュナイゼルでんかぁ!でも誰も肯定する人いませんよぉ?」
「それは残念。」
けれど本心ではそう思ってはいないようで、口元にはいつもと変わりない笑みを浮かべる。
「貴方様は・・・!いや!殿下のわけが無い!エリア11に来るなんて話は聞いていない!殿下もろとも死んでもら・・・」
「ロイド。」
「はいはい。」
軍人が最後まで言う前に、シュナイゼルがロイドを呼ぶ。皆まで言わずともわかるのか、ロイドも面倒くさそうに一歩前に出ると、突然目の前から消える。
気が付けば軍人たちが一人二人と倒れていき、あっという間に囲んでいた半分以上が視界から消え、床に寝そべっている。
「物騒な世の中になってしまったね。」
「全くですよぉ!どうして貴方なんかを僕が守らなくちゃいけないんですかぁ?!」
「それもそうだ。私も君なんかに守られてしまったよ。」
「それに貴方の偽者なんて、そうそうにいるわけ無いじゃないですかぁ!この性格の悪さを他の人間が同じように出せるわけ無いですよぉ!」
そういった会話をしながら楽々と倒していくロイドにカレンは思わず恐怖の念を抱いた。
「ロイド、それはどう意味なんだい?」
「特に意味なんてありませんよぉ。」
「そうなのかい?」
「えぇ。」
会話が終わるのと同時に、最後に残った一人の後ろに回りこみ首に一撃手刀を入れる。
「色々と驚いただろう?すまなかった。まさかこんなことになるとは私も予想していなかった。」
「・・・」
「ルルーシュ。元気そうでよかった。」
「・・・シュナイゼル、兄上・・・」
もう殆どこの場にいるものにはばれてしまっているため、ルルーシュは素直にシュナイゼルのことを兄と呼ぶ。
兄と再び呼んでもらえたことが嬉しかったのか、シュナイゼルは柔らかい笑みを浮かべる。
「ルルーシュ、そんなに怖がらないでくれ。私はお前を連れ戻しに来たのではない。ロイドも言っていただろうと思うが、お前の姿を見に来ただけなのだよ。
お前が生きていたからといって、私は本国に伝えようとは思っていない。
ここの生活が好きなのだろう?そう思っているルルーシュから、私はこの生活を取り上げることなんか出来ない。だから、存分に楽しみなさい。」
「兄上・・・」
「・・・殿下。あの誓いは、いまだに有効でしょうか・・・?」
先ほどまでとは違う、真剣なまなざしでそう言うのは、ロイドだった。
ルルーシュはシュナイゼルに向けていた視線をロイドへと向けた。二人の視線が交わる。
「・・・どうして・・・俺には、お前に返すことの出来るものなど・・・もうこの手には残されてなどいないのに。」
「それでも、それでもいいんです。だって、殿下は僕の運命の人ですから!初めて会ったときに感じたんです。僕の主はこの人だって!
だから殿下、どこまでもついていきます。貴方のそばにいられるのなら、全て捨てます。貴方のそばにいられること・・・それ以上に大切なものなど、ありませんから。」
「ロイド・・・そうか、わかった。」
そう言ってルルーシュはシュナイゼルのほうに視線を向ける。
その視線を受けてシュナイゼルは小さく頷く。
「この場には、誓いを立てる剣も無い。けれど私が見守ることで、正式な騎士として認められる。略式だが、十分だろう?」
「えぇ。お願いします。」
右手を差し出すルルーシュの手を取りロイドが口元に寄せる。
正式な騎士となるには、皇帝か皇族の誰か一人が見守ることが重要であった。それがあって初めて、主と騎士の関係になれるのだ。
「我、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは汝、ロイド・アスプルンドを騎士とすることを、ここに誓う。」
「イエス・ユア・ハイネス。どこまでも、貴方のそばに。」
もう決して離れません。
どんなことがあろうとも。